登山知識及び技術向上コース(谷川連峰)山行報告
実施日 山名 参加者 会員 障害者 0名 健常者 5名
平成25年10月12日~13日 谷川連峰(一ノ倉岳・茂倉岳・武能岳) 合計 5名 会員外 障害者 0名 健常者 0名
コースタイム:
10/12 土合山の家(5:30)…マチガ沢出合(6:35-6:45)…ラクダのコル(9:05-9:20)…
    トマの耳(10:50-11:20)…オキの耳(11:35)…一ノ倉岳(12:45-12:50)…武能岳(14:55-15:00)
    …蓬ヒュッテ(15:40)
10/13 蓬ヒュッテ(6:35)…白樺避難小屋(8:00-8:10)…芝倉沢(10:35-11:15)…
    一ノ倉沢出合(12:30-12:50)…谷川岳ロープウェイ(13:45)
天気:
10/12 晴れ後霧後風雨
10/13 晴れ時々曇り

★10月12日

 日本海を進む低気圧がオホーツク海に進み、今日から冬型気圧配置になる。関東は良いが谷川連峰は冬型の影響を受けて、冷たい風雨になる可能性が高いと予想していた。ところが、早朝、土合山の家を出ると快晴となっている。おや、強い冬型にはならなかったのかな?と思ったが、この好天は寒冷前線通過後にポカッとできた気圧の安定部の影響で広がった疑似好天だったようだ。旧道を歩いていたとき、確かに好天だったが、清水峠方面にでていた雲が冬型の影響ではないかなと少し気になっていた。

 

 しかし、マチガ沢に着くと素晴らしい天気の下で、紅葉した木々が美しい岩稜が目に入る。まずは沢沿いに緩やかに登り始める。マユミの実がとてもきれいだった。急登が始まり、マチガ沢がよく見える展望の良いところに来ると、一人の女性が立っている。マチガ沢に人が大勢いるが、その女性が「NHKの番組作りです」と教えてくれた。バリエーションルートから百名山を目指す番組を制作中らしい。番組制作の人たちはシンセン沢方面に登っていった。

 

 この頃から、雲行きが怪しくなり、山頂部を隠していった。それでも、美しい紅葉を堪能しながら登っていく。しかし、巌剛新道は、次第に急傾斜になり、岩場が現れてくる。幅はあるがロープなどは張られていない岩場は、片側が切れて滑りやすく、山側の木につかまりながら慎重に進む。Sさんがつかまった木が折れ、転んだときにはひやっとしたが、手を擦りむいただけで済み、ホッとした。

 

 その後も、岩場が連続して出てくる。しかし、鎖が付いていたり、はしごがあったりで、比較的安心して登れる。西黒尾根との合流点、ラクダのコルも近づく。しかし、雲はどんよりと垂れ込めてきた。NHKの人たちは大丈夫かと心配になる。

 

 西黒尾根は、霧に包まれた中を登る。いくつかの岩場や鎖場を超え、傾斜が落ちると肩の広場に着く。トマの耳まで登って昼食タイムとする。山頂に着いたとき、一瞬霧が晴れてこれから向かうオキの耳への稜線が少しだけ見えた。肩の小屋も一瞬だけ見えたが、すぐに深い霧が覆い隠していった。

 

 人の大勢いるトマの耳を後にオキの耳に向かう。オキの耳も人が多かった。ここから北部への稜線は人がぐっと減る。雨も降り始め、ここから風雨にさらされて歩くことになる。山は、そこにいるだけで危険だから、最も安全な登山は速く歩くこと(速く歩くためには体力作りと技術や知識の習得が必要になる)だと言われるが、このような風雨の時は、まさにそれが重要で、休憩して風雨に打たれて体温を奪われるよりも、ゆっくりでも良いから歩き続けた方が体調を崩しにくい。そんなことも考慮し、頻繁な休憩は取らず、山頂などで小休止を取るだけで歩き続けた。

 

 小さな避難小屋がある一ノ倉岳を過ぎ、茂倉岳で北に進路を取る。晴れていたら素晴らしい展望が広がるはずだが、今日は30mくらい先までしか見えない。西風が情け容赦なく、左のほほに吹き付ける。眼鏡をしているCさんとNさんは、眼鏡が曇って足下がよく見えないようだ。Sさんは外して歩いたが、Cさんは外すと見えないということで、眼鏡をかけて歩いている。私は、過去にそういう経験をしていることと写真を撮る関係で、連続装用のコンタクトをしている。

 

 風雨の中で、最後のピーク、武能岳に到着する。あとは、蓬ヒュッテに向かってクマザサの草原を下るだけだ。テントが見えると、その先に蓬ヒュッテが見えた。小さく素朴な蓬ヒュッテで一夜を安心して過ごすことができる。山小屋は本当にありがたい。

 

★10月13日

 夜半、外に出てみると、深い霧と雨で何も見えなかった。今日は、馬蹄形縦走の後半部、朝日岳から白毛門に縦走する予定だが、昨日の風雨の中の行程でCさんが疲れたこともあり、みなさんで相談し、土合へ下山することにする。

 

 天気も悪いだろうと思って外に出てみると、霧が晴れて素晴らしい風景が広がっている。遠くに苗場山も見える。まだ風も強く、雲も多いが、視界が十分にあるので、写真を撮るために少しだけ七ッ小屋山方面に登ってみる。遠くに苗場山や仙ノ倉山、平標山などが見え、七ッ小屋山と大源太山も見えていた。ただ、巻機山や谷川岳はまだ雲の中だった。

 

 蓬ヒュッテに戻って、土合方面に下り始める。気持ちの良い草原を下る。水場で水を汲み、コーヒータイムとする。SさんやNさんが持ってきたコーヒーをいただく。体が温まり、ありがたい。

 

 武能岳方面や清水峠方面の展望を楽しみながら、草原の中やちょっとした岩場を下っていく。清水峠からの登山道(旧国道)が合流すると、すぐに白樺避難小屋に着く。昔は幽霊を見た人がいるそうだが、今はいないだろう。少し先で、新道と旧道に別れていた。旧道の入り口に木が横に置かれて通せんぼをしていたが、「雨の日は滑りやすいので注意」と書かれていただけなので、旧道を行ってみることにする。

 

 しかし、少し歩いたら、左側が切れて、足下が外傾し、草付きでつかまるところもない滑りやすい土の道に出た。滑り落ちたら助からない。ここで、新道に変更して引き返そうかと話したが、少し行って様子を確認することとなる。私がトップでそこを超え、その先を見るとそれほど難しそうではない。その部分だけが問題だが、すでにNさんが通過していた。登山経験の少ないCさんをザイルで確保して、全員通過する。

 

 次に現れたのは、武能沢の対岸にある5mほどの垂直の岩場。ここは全員、ザイルで確保するが、ロープが垂れていて、問題なく通過する。さらに、また滑りやすい片側が切れた土の道が現れたので、ここはロープをフィックスして通過する。

 

 ここを過ぎるとしばらくは悪いところがなくなった。登山者も何人か登ってきた。ただ、気の抜けないところは何カ所もある。武能岳から伸びる大きな尾根を回り込むと、幽の沢や一ノ倉沢の岩場も見えてきた。その後も、ロープにたれたところがあったが、問題なく通過する。

 

 そして、芝倉沢に着き、ホッと一息。コーヒーや紅茶を飲んで、無事にここまで来たことを喜ぶ。堅炭岩や武能岳方面は紅葉が美しい。芝倉沢からすぐのところが少し崩れていたが、それから先は、林道となり、安心して歩ける。SさんとKさんの話は、ここまでもそうだったが、ずっと止まらなかった。

 

 幽の沢を過ぎ、覆い被さるような一ノ倉沢を見て、ロープウェイの駅へと向かう。土合橋の駐車場に車を止めていたCさんに乗せていただいて、ユテルメ谷川へと向かった。予定通りのコースの方が安全だったが、体力を必要とし、エスケープルートは、体力的には楽だが、危険度が高かった。下りは、新道を使うべきだったと反省した山行でした。

 

                                                                 記:網干

 

《参加者の感想》

 10月連休、もっとも紅葉が綺麗といわれるこの時期、谷川連山縦走にはりきってむかう。朝は澄み渡る青空で、ラクダのコルでは日焼け止めを塗ったくらい。しかし天気が変わりやすいといわれる谷川岳。あっという間に天気が変わっていく。リーダーが冬型気圧配置といったことの意味がよくわかった。

 

 山頂へ着いたら雨が降り出し、縦走が始まった時はすでに風雨にうたれていた。遠足気分の服装の人がたくさんいたが、あの人たちはあれからどうしただろうと心配したほど。オキの耳を過ぎて、縦走の始まり、もちろん眺望はない。近くの草紅葉だけ見ながらひたすら下る登る。滑る岩、笹の下に隠れている浮石、空気もまるで冬だった。風が強いから温度も下がる、休みたいけど動かないと体温が下がるから早く動きださないといけない。それを何度か繰り返し、なにも見えない中、蓬ヒュッテの青い屋根を見たときはほっとしました。

 

 翌日は昨日見えなかった山並みがよくみえている。ずっと遠くの山まで見える。あの稜線、歩いてきたんだ、やっと昨日歩いてきた道が見えてうれしかった。馬蹄形をいくという愛知の健脚な方たちを見送り、下山ルートへ。その下山ルートがすごかった。ヤマケイオンラインの現地情報に「降雨により崩壊が進み、常に地形が変化しています」とあったことを思い出す。以前このルートを歩いたNさんも全然違ってみえるといっていた。Aリーダーのような経験豊かな人がいなかったらあの険しい旧道を歩き通せなかっただろう。縦走へ向かわなかったことで山ではなにが起こるかわからない、なにが起こっているかわからない、どんなことにも対応できるような技術を習得していかなければならないんだ、ということがわかりました。リーダーにロープワークで最低必要なのはエイトノット、ブーリンノット、と教えていただいた。それよりもわたしはシュリンゲ、カラビナを持って出かけなかったことを反省しなければならない。もしか して?と余計に持ってきていたCさんにお借りできたことはとてもありがたかったです。

 

 山で無事に帰るためにはなにが必要か、それを身をもって経験できたことは貴重な体験でした。冷静に着々とことを進めていくリーダーは改めてすごい人だなと思いました。リーダーならび参加者の皆様、いろんなところで力、勇気を貸していただき、ありがとうございました。

                                                              記:S.Kさん