登山知識及び技術向上コース(白馬三山)山行報告
実施日 山名 参加者 会員 障害者 0名 健常者 5名
平成29年8月4日~6日 白馬三山 合計 5名 会員外 障害者 0名 健常者 0名
コースタイム:
8/4 猿倉(6:05)…小日向のコル(8:50-9:05)…水場(10:00-10:30)…白馬鑓温泉(12:40)
8/5 白馬鑓温泉(6:35)…稜線(9:55-10:25)…鑓ヶ岳(11:00-11:35)…杓子岳(12:50)…
  村営頂上宿舎(14:50-15:10)…白馬岳(15:40)…村営頂上宿舎(16:10)
8/6 村営頂上宿舎(3:45)…裏旭岳(4:50-5:15)…清水岳水場(6:45-6:55)…
  不帰岳避難小屋(8:45-9:00)…3つめの沢(12:20)…祖母谷温泉(15:30-16:00)…欅平駅(16:35)
天気:
8/4 曇り時々晴れ
8/5 晴れのち曇り
8/6 曇り一時雨

★8月4日

 夜行バスで猿倉に予定よりも2時間近く早く着く。昨晩、白馬に泊まったメンバーは6時20分頃着く予定のため、2時間半くらい待たなければならないと思っていたが、タクシーで来てくれたおかげで、6時5分に猿倉を出発できた。

 

 大雪渓に行くメンバーが多いが、白馬鑓温泉方面の登山道に入ると、登山者はめっきり少なくなる。今日明日は、猛暑の予報。下界の最高気温は35度以上になるらしい。まだ早朝なので涼しいが、これからどうなるか心配だ。

 

 樹林帯の道を緩やかに登っていく。サンカヨウやキヌガサソウはすでに実を付けている。モミジカラマツやタマガワホトトギスは元気に咲いている。小日向のコルへの急登が始まる頃、お花畑に出会う。タテヤマウツボグサ、シモツケソウ、オオバギボウシ、ワレモコウ、ニッコウキスゲなどがたくさん咲いている。

 

 小日向のコルに着くと、杓子岳や鑓ヶ岳が雲の間から少しだけ見えている。雄大な風景だ。Oさんのザックにクロヒカゲが止っている。今回は、蝶に詳しいCさんも参加している。

 

 小日向のコルから下りにかかると、今日の宿、白馬鑓温泉が見える。急な雪渓に囲まれた急斜面に立っている。すごいところに作ったものだと感心する。見た目には近そうに見えたが、かなりの時間を要した。それでも、早く着きすぎないように花を楽しみながらゆっくり行くこととする。

 

 クルマユリやクモマニガナなどが咲くお花畑が続く。山腹をトラバースしながら進み、水場で昼食タイムとする。直射日光はさすがに暑い。 しかし、あまり日陰はない。

 

 湿ったところにはニリンソウが咲き、キンポウゲも増えてくる。尾根を回り込むと、杓子沢の雪渓を渡る。上部には滝が落ちている。さらに崩れ沢を渡る。樹林が切れてがれたところにサルたちがいた。雪渓を登るサル。まだ小さな子ザルもいる。雪が溶けたばかりのところには、フキノトウも見られる。スジグロシロチョウも舞っている。

 

 広い雪渓を渡り、トラバースを繰り返す。登山道の下でルリビタキが何度も同じところを行ったり来たり。背景が雪渓のため逆光になってしまうが、何十枚も写真を撮らせてもらう。

 

 少し急な雪渓を登り、途中からトラバース。小屋の下の雪渓は、大きく崩れている。テガタチドリやエゾシオガマなどの咲く登山道を登り、カンチコウゾリナの群落を過ぎると白馬鑓温泉は近い。

 

 温泉に入って汗を流し、英気を養う。男子風呂は混浴のため、女性は水着で入っていた。汗を流した後は、関西から来たグループとの交流も始まり、午後のひとときを楽しんだ。

 

★8月5日

 今日は白馬岳までのため、比較的ゆっくりできる。小屋の朝食を食べて出発する。小屋の荷物運びをしている方が、「ここから鎖場までは慎重に行ってくれ。そこから先はお花畑が広がるから」とアドバイスしてくれる。

 

 小屋の左側にある雪渓の横の道を足下に注意しながら登っていく。雪渓から離れ、右寄りに道は取られている。しばらく行くと、上部には岩場があり、先行パーティーが登っている。

 

 鎖の連続となる岩場をゆっくり登っていく。岩場は展望が良い。白馬岳は見えないが、雲海の上に栂池方面の稜線が見える。

 

 この岩場を越えると、いきなり目の前にお花畑が広がる。チングルマやハクサンコザクラが咲き乱れている。右手には鑓ヶ岳が見え、左手には名前のない岩峰が見えている。ここからが大出原だ。

 

 次々に一面に咲くチングルマのお花畑が現れる。その中に、ハクサンコザクラ、ツガザクラの仲間、ハクサンイチゲ、クルマユリなどが咲き、上に上がっていくとミヤマゼンコ、ミヤマアキノキリンソウ、エゾシオガマなども咲くようになる。ウサギギクもたくさん咲き、アサギマダラも舞っている。

 

 稜線が近づくとコマクサが咲き、イワツメクサ、チシマギキョウ、イブキジャコウソウなどが咲くようになる。稜線に出たところで休憩する。黒部側は雲がわき上がり何も見えないが、これから登る鑓ヶ岳は石灰岩の山なので、白い山容がまぶしく感じる。

 

 鑓ヶ岳への登りでは、イワオウギ、キバナノコマノツメ、タカネシオガマ、イワギキョウ、タカネツメクサなどが新たに見られた。

 

 鑓ヶ岳の山頂で昼食タイムとする。ここにはシコタンソウが咲いている。山頂で出会った方が、ミヤマムラサキの写真を見せてくれる。途中でリンネソウも見つけたとのこと。リンネソウは20年ほど見ていないので、楽しみが広がった。

 

 山頂からは、これから向かう杓子岳がよく見えているが、白馬岳は雲の中だった。

 

 山頂からの下りでは、ムカゴトラノオ、ホソバツメクサなどが新たに見られ、ミヤマオダマキも見ることができた。白と紫のコントラストが美しく、コマクサよりも高山植物の女王と言えるのではないかと思っている。

 

 ウルップソウは花が終わっていたが、ミヤマウイキョウ、タカネイブキボウフウ、ミヤマムラサキ、ミヤマアケボノソウなどが咲いていた。「蝶がいるよ」と声がかかり、行ってみると、テガタチドリにアカタテハが止っていた。イワオウギと少し違うシロウマオウギも見られた。

 

 杓子岳の登り口にザックを置いて杓子岳を往復する。Cさんは、登らずに先に行ったとのこと。何度かここを通過しているが、杓子岳の山頂は初めて。振り返ると雲に隠れていた鑓ヶ岳が姿を見せるようになっていた。

 

 杓子岳を往復して、少し歩いたところでCさんと合流する。ハクサンフウロやミヤマシュロソウも咲いていた。シコタンハコベはおしべがきれいだ。

 

 Sさんから、「ライチョウの羽が落ちているよ」と声がかかる。保護色となるこの季節は、地面の色に似ている。私が花の写真を撮っているときに、ライチョウが見られたようだが、私が着いた時には見られなかった。先週、ライチョウをたくさん見ているので、今週は花優先だ。

 

 ミヤマクワガタや赤花の仲間が咲き、ヨツバシオガマも咲いている。そして、リンネソウを発見。他の草の陰で見つけにくかったが、少し行ったところで再度発見。この付近は比較的多いようだ。

 

 そして、今日泊まる村営頂上宿舎にようやく到着する。小屋の周辺はすばらしいお花畑。ミヤマキンポウゲとハクサンイチゲが非常に多い。そしてウルップソウもまだきれいに咲いていた。ミネウスユキソウも咲いている。

 

 NさんとSさんは、白馬岳には登らないということなので、OさんとCさんと3人で山頂を往復する。Oさんは白馬岳には初登頂とのこと。展望がなくて残念だが、山頂に立てて良かった。途中ではミヤマダイモンジソウも咲いていた。

 

 頂上宿舎に戻り、のどを潤してすぐに夕食となる。明日は、日の出前に出発するので、今日は早々に床につくことにする。

 

★8月6日

 今日は3時起床。長い下りが続くので、できるだけ早く出発したい。3時半には出発準備が整ったが、外は霧で視界が悪い。霧の夜は、道に迷う危険性が高いので、少し様子を見ることにする。3時45分に外に出たら、星空が広がっている。すぐに出発することにする。

 

 旭岳方面への分岐点は昨日のうちに確認済み。ヘッドランプを付けて、旭岳方面に向かっていく。旭岳をトラバースする手前の雪渓で、軽アイゼンを付ける。空には明けの明星が見られるだけで、明るさを増してきた。シルエットの白馬岳と明かりのまぶしい白馬山荘が見える。

 

 雪は、ところどころ氷り、堅く締まっている。アイゼンがこぎみよく決まる。雪渓を過ぎたところでアイゼンを外す。旭岳のゴーロ帯をトラバースしていく。

 

 裏旭岳付近で朝食タイムとする。ここにはミネズオウが咲いている。この付近もハクサンイチゲとチングルマのお花畑だ。

 

 これから向かう小旭岳と清水岳が見えている。裏旭岳を下り、尾根の北側をトラバースしているとき、Sさんが少し足を踏み外した際、左の足首を痛めたようだ。少し行ったところで、テーピングする。

 

 この尾根はイブキトラノオが多い。北側には鉢ヶ岳と朝日岳が見えていた。雪倉岳は鉢ヶ岳の陰になって見えなかった。

 

 今まで雲に覆われていた南部が次第に見えるようになる。運慶の上に浮かんでいた山を剣岳と思ったが、それは立山だった。立山三山も縦からみると、以外にとがって見える。少しすると剣岳が見えるようになった。さらに遠く槍ヶ岳も見えた。

 

 後立山方面は、鹿島槍の双耳峰と五竜岳も見えてきた。次第に杓子岳と鑓ヶ岳も見えるようになる。Sさんは痛いであろうと思われるが、一言も「痛い」といわずにがんばって歩いている。

 

 コマクサのお花畑があり、マツムシソウも咲いている。次から次へと今回新しく見られる花が現れる。

 

 清水平の水場は、ハクサンコザクラが多い。そして、清水岳山頂入口には、ミヤマアズマギクが咲いていた。

 

 清水岳を過ぎ順調に下っている。タカネナデシコやハクサンシャジン、ハクサンチドリなども咲いている。

 

 時間がかなりオーバーしているため、みんながんばって歩いている。次々に現れるお花畑を楽しみながら下り、樹林帯へと入っていく。そして、8時45分に不帰岳避難小屋に到着。ここで、途中、抜いていった単独の男性に会う。「思ったより早いね」と彼はいう。

 

 少し行ったところに水場があるので、水を汲みたい人のペットボトルを預かり、先に行って汲んでおくことにする。

 

 ここからの道は、急斜面のトラバースが多くなり、足下が不安定になる。それでも、センジュガンピが咲いていて癒やされる。

 

 なかなかペースが上がらず、予定の電車は無理だが、今日中に帰れない可能性も出てきた。それでも、ようやく百貫の大下りまで来た。ここは非常に急で注意が必要だ。ここを下ると、今度は沢のトラバースが続く。沢自体は問題ないが、その両側が切れ落ちていて、外傾した滑りやすい踏み跡が着いているだけで、非常にいやらしいところだ。滑り落ちたら、まず助からない。慎重に通過していく。

 

 CさんがSさんに着いて、最後に下ってくれているので助かる。ロープの付けられた急な階段を過ぎ、ロープがなければ滑り落ちそうなところを、ロープ頼りに下り、沢を渡り、さらに外傾して非常に滑りやすい踏み跡を通過したところで、全員集合する。

 

 NさんとSさんは、今日は、祖母谷温泉に泊まっても大丈夫ということになり、Oさん、Cさんと私で先を急ぐことにした。

 

 ここから先は、楽な道ではないが、今までのような危険はなくなった。ぐんぐん下りていくが、長い下りのためにCさんが休み休み下りるようになった。それでも、確実に下りてくる。

 

 ここを下れば、名剣沢に下りるというところにロープが張られた急なところがあった。ロープを使うと降られることもあり、ロープを使わず左側を下りるようにOさんに言ったが、あまり良いアドバイスではなかったかも知れない。Oさんが足を滑らせて、3mほど滑落してしまった。けがなどはなかったが、心理的に少しショックになってしまった。Cさんも追いついてきた。

 

 少し名剣沢に沿って下り、右手に入ると、林道になっていた。 電車の時間等を確認するため、一人で先に祖母谷温泉に向かう。

 

 欅平発の終電のトロッコ電車では今日中に家に帰ることはできない。欅平発16時43分の電車に乗ることにする。3人は大急ぎで風呂に入り、出発準備をする。遅れているSさんとNさんはまだ来ない。温泉の方に、メモで私の電話番号を渡し、もし18時を過ぎても下りてこないときは連絡してほしいことを伝える。もしもの場合には、戻ってくるつもりだった。

 

 16時に温泉を出て、下りてきた林道を見たとき、白いものが動くのが見えた。「ヤッター、二人が下りてきた」。時間ぎりぎりのため、言葉を交わすことはできなかったが、手を思い切り何度も降って分かれた。

 

 まだ欅平までは40分歩かなければならない。それでも、二人が下りてきたので、気持ちは軽い。欅平から懐かしいトロッコ電車に乗り、宇奈月から電鉄富山の電車で新黒部下車。隣にある黒部宇奈月温泉駅で新幹線に乗って、東京へ向かう。

 

 一面のお花畑、100種類近い花、雪渓の横断、山上の温泉、多くの蝶、長い下り、厳しい沢の横断など、様々な思い出を胸に乗った新幹線では、最初から最後まで爆睡でした。みなさま、お疲れ様でした。

                                                             記:網干