★7月28日
都内から室堂まで直行できる夜行バスに乗り、一路室堂へ。しかし、バスの中の冷房を自分の側に向けないようにすることがうまくできず、少し痛かったのどがさらに痛くなってしまった。完全に風邪を引いてしまったようだ。
室堂到着が7時10分頃。この時間は、まだケーブルが動いていないため、人は少ない。しかし、すぐに大勢の子どもたちが来て、非常に賑やかになった。
直前になって、台風が直撃する予報になり、女性二人は、室堂に泊まって、明日の朝、帰るとのこと。五色ヶ原まで行くのは、私とIさんだけとなる。台風の状況によって、五色ヶ原から室堂に引き返すことも考えている。台風の進路次第になるだろう。
五色ヶ原は、39年前に1度だけ、通過したことがあるが、その時は連日雨にたたられ、せっかくのダイヤモンドコースなのにほとんど展望を得られなかった。しかし、最後だけは快晴に恵まれたことをしっかり覚えている。その時は、夜行急行が大雨で遅れて富山駅に着き、1日目のコースを変更したことや、スゴ間山のキャンプ地に着いた途端に土砂降りになり、一晩中一睡もできなかったことなど、思い出の多い縦走だった。今回は、少なくても1日目は好天が期待できそうだ。
室堂から室堂山荘の分岐まで行く。大勢の子どもたちが休んでいて、とても賑やかだった。早々に出発することにする。
残雪の上を歩き、その先は、コンクリートで固められた遊歩道となる。振り返ると、ミクリガ池が下に見え、遠くには毛勝三山が見える。奥大日岳も見えている。奥大日岳より高くなると、室堂山は近い。室堂山からは、立山カルデラの向こうに、五色ヶ原や薬師岳、遠く槍ヶ岳も見える。すばらしい展望だ。
ここから、浄土山への登りとなる。標高差160mほど。ハイキング気分の女性陣は、きつく感じたようだ。浄土山に着くと、ここも子どもたちであふれかえっている。少し先の富山大学立山研究所で休憩することとする。
ここで、女性二人と別れ、Iさんと二人で五色ヶ原を目指すことになる。ここから見られなくなる剣岳にも別れを告げて出発する。女性二人は手を振って見送ってくれた。
竜王岳の西側斜面をトラバースして下っていく。地図では残雪注意となっているが、もう残雪はなかった。ミヤマトリカブトやハクサンフウロなどが多く見られるようになってきた。
鬼岳の山腹に登山道が付けられている。見えている尾根を回り込んだところが、過去に事故の起きた雪渓だろう。慎重に行こうと思う。
尾根を回り込むと、獅子岳が大きく見え、下には雪渓が見える。ステップがしっかり切られ、雪も緩んでいるので、軽アイゼンを付けるまでもなく、問題なく下り、トラバースする。
雪渓を過ぎるとお花畑が広がる。シナノキンバイやクルマユリ、ハクサンイチゲ、チングルマ、ウメバチソウ、ミヤマダイモンジソウ等々。いろんな花が楽しませてくれる。今年はコバイケイソウの当たり年だろうか。ところどころで群落が見られた。
獅子岳に着く頃にはもうお昼だったが、今日は、それほど雲が湧き上がることなく、視界はとても良好だ。これは、台風の影響だろうか?
今回のコースは、ずっと森林限界よりも上を歩くため、ずっと展望が利く。まさに稜線漫歩だ。獅子岳を過ぎると、今までは手前の山があるため、その全貌を見ることのできなかった五色ヶ原は、指呼の間に見える。五色ヶ原山荘もしっかり見えるようになってきた。
しかし、五色ヶ原に行くまでには、ザラ峠まで400mほど下ってから登り返さなければならない。途中には、鎖とハシゴもあった。
ザラ峠は、佐々成政が家康に会いに行くために越えたと言われるところ。何も装備がない時代に、こんなところを越えられたのだろうか? 事実だとしたら、すごいことだと思う。
ザラ峠から五色ヶ原には緩い登りが続く。そして木道が始まるところが、五色ヶ原の一画だ。まだ多少の登りがあるが、コバイケイソウやチングルマのお花畑を楽しみながら歩く。好天も続いていて、槍ヶ岳もまだ見えている。
木道を歩いていると、何か黒っぽいものがガサガサと動いた。それはライチョウだった。全然逃げようとせず、私が通り過ぎると、元の位置に戻り、イワイチョウの葉を食べたりしながら、身体を震わせて、くぼみに身をおつつかせる。もしかしたら、抱卵中だったのだろうか?すぐに立ち去る。
すぐ前に五色ヶ原山荘が見えるようになる。ビールを買って二人で乾杯する。入浴もできるらしい。今日は台風が心配され、キャンセルした人が多かったのだろうか? 一部屋を私とIさんだけで使うことが出来た。宿泊客も30人程度だったのではないだろうか?
台風の進路予報は、当初の予報とかなり違ってきて、今まで見たことがないような動きを予報している。関東に近づいてから西に進路を取る予報だ。この予報では、立山町は曇りで雨は降らない予報。しかし、上高地は朝から雨の予報。翌朝起きて判断することとする。
夜行バスでの寝不足とのどの痛みがあるので、夕食後に早々に眠りについた。
★7月29日
3時半頃起きてみると、まだ曇り空で視界もある。どうしようか迷うが、薬師岳等南部は、雲に包まれて展望はなさそうだ。今晩であっても雨が降ると、薬師岳の下りにある沢が増水する危険性も高い。自分自身の体調もよくないことから、薬師岳方面には行かず、室堂に引き返すことにする。
朝食は弁当にしていたので、昨晩もらった弁当を食べる。朝のうちは、ある程度見えていた周囲の山々も、次第に雲に隠れるようになる。雨は午後になってからと思われるが、早めに帰路につくことにする。
ザラ峠付近から富山側を見ると、まだ青空も見えているが、後立山側は、重い雲に包まれ始めている。雄山も次第に見えなくなっていく。獅子岳を登り返していると、強風が襲ってくるようになる。薬師岳に向かっていたら、霧と強風との戦いだったのではないかと思われた。
今日は、Iさんが先頭で歩いている。ペースはかなりハイペースだ。五色ヶ原から獅子岳までガイドの地図では2時間5分のところ、1時間半で来た。獅子岳から立山研究所まで2時間半のところ、1時間10分だ。5パーティーほど追い抜き、とても速いペースで歩いてきた。研究所からは一ノ越経由で室堂に行くことにする。霧雨のようになり、ズボンはびっしょり濡れるようになってきた。
一ノ越では休まず、そのまま下る。今日はこんな天気なので、登山者は少ないだろうと思ったが、今日も子どもたちの集団登山が行われている。雪渓は渋滞しているので、ステップを切ったところより上を歩いて抜ける。
昨日、室堂に泊まった女性陣は、もうバスに乗って帰路についたようだ。我々はミクリガ池温泉に入って、暖まることにする。
ミクリガ池の手前で人だかりができているので、何ですかと聞いたら、オコジョがいるらしい。温泉からの帰りでもいるだろうと思い、写真やビデオは後で撮ることにして、まずミクリガ池温泉に行く。
温泉でゆっくりした後、オコジョの撮影にかかる。望遠レンズに代えておけばよかったのに、ザックを下ろしてレンズを出す時間がもったいないので、そのまま標準レンズで撮る。石の間から顔を出してはまた潜り、石の間を動き回っている。どこから顔を出すか分からない。そんな素早い動作をする、かわいいオコジョに出会えてよかった。
扇沢に下ってあずさで帰るより、富山から新幹線の方が早いというIさんの案に従って、新幹線で帰ることにする。これが正解だった。中央線特急のかいじはほとんどが運休。あずさもかなり運休のようだ。新幹線のはくたかは、全く遅れることなく、上野に着いた。
台風のおかげで、予定通りの行程を歩けませんでしたが、すばらしい展望と高山植物や、ライチョウ、オコジョに出会えて楽しい山行でした。そして、何よりも、いろんなアイディアを出してくれるIさんに感謝です。
記:網干 |